虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
ローソファーに倒れ込んだまま、私たちは何度も抱擁し、口づけを交わした。
口づけの合間に、何度もお互いを呼び交わした。
大人になった私たちが、あの日と同じ呼び名で──。
九条くんが耳元で、理恵、と囁くたびに、身体の奥が熱くなって、愛しさが込み上げてくる。
私は、まあくん、と囁き返して、彼の背中に回した腕に、力を込めた。
何度目かの抱擁のあとに、九条くんは少し身体を離して、言った。
「あの日、理恵に会えてよかった」
なんのこと? と見つめ返す私に、
「理恵がこっちに来るとき乗っていた便に、俺は乗務していたんだ。出発前のブリーフィングで見た登場者名簿の中に、理恵の名前を見つけて」
「探していて、くれたの……?」
「機体を降りても、引き継ぎとかチェックですぐには探しに行けないから、間に合わないだろうとは思ったけど、もしかしたら、って」
あれは偶然じゃなかった。
九条くんは制服のまま、広い空港のロビーで、私を探していてくれた。
私は、まあくん、と声に出して、彼の逞しい胸板に顔を押し付けた。