虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 九条くんには言えない。
 私が一回り以上も年上の、上司の愛人だったなんて。
 
 愛されていると、守られていると思い込んでいた。
 騙されて、利用されていただけだと知ったとき、私は空っぽになってしまった。

 そして会社を辞め、ニューヨークにやって来た。
 
 なのに、なぜ……。
 
 ようやくめぐり合った、大切な人なのに、
 ようやく掴みかけた、幸せなのに、
 どこまで私を苦しめるのですか、田村部長──。  

 次の日の朝、九条くんは何もなかったかのように、笑顔で私を迎えてくれた。
 
 でも次の日も、その次の日も、
 彼が私に触れることはなかった。

 私は、九条くんと結ばれなかったことよりも、彼を傷付けてしまったことの方が辛かった。

 そんなぎくしゃくとした日が続いた、ある午後のことだった。
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