虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
フロアに上がると、その二人は勝手を知った様子で部屋の中に入って、こちらが案内する前にリビングのロングソファーに腰掛けた。
九条くんの知り合いらしい。
だったら、お茶出ししなくちゃ。
でも、フィアンセって、どういうこと……?
混乱したままの私に、その女性は、
「あなたも気遣いは不要ですから、こちらにお掛けなさい」
と、当たり前のように上目線で言ってくる。
でも妙に、嫌味が無かった。
私は軽くお辞儀をして、彼女の前に腰掛けた。
あらためて見ると、非の打ち所がないくらいの美人だった。意志が強そうな瞳が、私を品定めするように眺めている。
一緒に来た男性も、少し冷たい雰囲気の美男子で、この二人が映画の撮影にニューヨークに来たと言っても、誰も疑わないだろう。
「あなた、お名前は?」
彼女が口を開いた。
「早川理恵です。九条くんの知り合いです」
「ふうん。いつお知り合いになったの?」
「私の名前だけ聞いて、あなたのお名前は教えていただけないんですか?」
彼女の隣に腰掛ける男性の目が、眼鏡の奥で一瞬光ったような気がした。
「そうね、礼を欠いてしまったことは謝るわ」
彼女は軽くお辞儀をすると、あらためて私に視線を合わせた。
「御倉紫月です。正臣の婚約者です」
婚約者って……。
九条くん、いったいどういうことなの──?