虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

「早川君、意固地になるな。君一人で何ができる」

 柔らかく優しく響く、落ち着いた声。
 でも、もう騙されない。

「部長、私は私を取り戻したいんです。あなたの近くにいては、私はあなたの道具でしかありませんから」

 いや、もう道具ですら無いのかもしれない。利用価値の無くなったただのガラクタ。それが、私。

 プライドも何もかもズタズタだったけど、最後に自分の意志だけは守りたくて、部長に捨てられる前に、自分から会社に辞表を提出した。

 世田谷のマンションを整理して、ニューヨークで演劇の学校に通う妹の真理に、連絡を取った。
 しばらく居候させてほしいという突然の申し出に、真理は何も訊かずに、明るい声でこう答えてくれた。

「理恵の好きにすればいいよ。理恵はいつもキチキチに生きてきたから、そんな時間も、あっていいんじゃない?」

 その言葉を聞いて、スマホを置いてから、初めて声を上げて、泣いた。
   
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