虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「シャキールにしてみれば、母さんに俺の進路を託されていたし、妾の連れ子に相続権を主張されて面倒な事になる前に、早めに外に出したかったんだろう。そのうえ御倉とのコネクションができるとなれば、いいことずくめだ」
急な話に紫月さんも驚いたけど、御倉本家はこれを許諾した。
「御倉にとっても、シャキールとのパイプはありがたかったからね。お祖父様から、お前の好きなようにしろって言われたわ」
軽く頬を染める紫月さんに、九条くんは強い口調で、
「だから何度も言うが、俺は何も聞かされていなかったんだ。それをいきなりキャンパスで呼び止められて、『あなたの婚約者よ』なんて言われても、冗談だとしか思えないだろう」
二人の言葉の往来に挟まれたまま、私は泣きたいくらいに悲しくなっていた。
九条くんと紫月さんは、私の知らない間に、私の及びもつかない世界で、私との思い出より何倍も長い時間を過ごしてきた。
それはきっと九条くんにとって、私との思い出よりもずっと濃厚で、緊密な時間だったに違いない。
九条くん。
本当に私でいいの?
私、紫月さんにはとてもかなわないよ。
私があなたを支えるなんてこと、とても自信がないよ──。