虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
私には、何もない。
ただ真面目に仕事に打ち込んでいれば、周囲に認められて、輝く未来や、素敵な恋が、向こうからやって来ると信じていた。
でも現実は、いいように利用されて、からっぽになってしまった私がここにいる。
到着ロビーの片隅でうずくまる私をまるで気に留めずに、人波も時間も、薄い膜の向こうで勝手に流れていく。
寒い。誰かに暖めてほしい。
かりそめでもいい。この冷え切った心と身体を、優しく抱きしめてほしい──。
涙が滲みそうになって、固く目を閉じた時だった。
「理恵。どうしたんだ? こんなところで」
ぶっきらぼうだけど、優しく気遣う声。
弾かれたように顔をあげると、いつの間にか目の前に、背の高い制服姿の男性が立っていた。
広いJ ・F・ケネディ国際空港の片隅で、いきなり日本語で話しかけられたのもそうだけど、それ以上の 驚きは、彼の出立ちだった。
紺の制服と制帽。制服の胸には、翼を意匠した金色のバッヂが輝いて、制服の肩と袖口には、金色に輝くラインが三本縫い付けられている。
一目でそれとわかる、エアラインパイロットだった。