虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
愛するということ
九条くんの腕の中で、私は自分が乗るはずだった、サント・ドミンゴ行きの便が離陸して行くのを見送った。
「理恵、こっちへ」
少し落ち着いた九条くんが、言った。
「どこに行くの?」
「大日本航空のVIPラウンジだ」
彼に手を引かれたまま、エントランスゲート横の職員通用口を通ってロビーに戻った。
途中、何度も警備員や航空会社の地上スタッフに止められたけど、九条くんがIDカードを見せると、皆おびえたように引き下がった。
私は九条くんに手を引かれたまま、早朝の国際空港のターミナルビルを歩いた。
いくつかのフロアを移動して、九条くんは繊細な彫刻を施した大きなマホガニーの扉の前に立つと、認証パネルにIDカードを当てた。
微かなロックの解除音の後、九条くんはゆっくりと扉を押し開けた。
「紫月さん……」
広いVIPラウンジの中央のソファーに、紫月さんと執事の榊さんが、向かい合わせに腰掛けていた。
「どうやら間に合ったみたいね、正臣」
紫月さんと榊さんが立ち上がって、こちらに歩いてくる。
どうして、という顔をする私に九条くんは、
「紫月が教えてくれたんだ、理恵が空港に居るって」
横顔のまま、答えた。