虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

「私たちは6時発のロサンゼルス行きに乗るつもりで、空港に来たの」

 紫月さんが口を開いた。

「そうしたら窓越しにあなたの姿を見かけて、尋常じゃない雰囲気だったから、正臣に電話したのよ。あの子が空港に来てるけど、何かあったのかって」

「……」
 
「早川さん」 

 紫月さんが、私の前に立った。

「教えてくれる? なんで逃げ出そうとしたのか」

「おい、紫月……」

 九条くんが割って入ろうとしたけど、

「あなたは黙っていて」

 紫月さんはそれを、鋭く止めた。

「納得できないのよ。試合放棄して逃げ出すような意気地なしに、何故私が負けなければならないのか」

「……」

「早川さん。正臣から、あなたのことは詳しく伺いました。正臣がどれだけあなたを、愛しているかも」

 愛している、という言葉を、紫月さんは辛そうに区切った。

「でも、私は正臣の婚約者です。私も彼を待ち続けていたんです。あなたには、私を納得させる義務があるのではなくて?」

 強い言葉の陰に、紫月さんの悲しい気持ちが揺れていた。
 紫月さんも九条くんを愛していた。
 私の知らない、長い時間の中で。

「あなたに私を納得させる何かが無ければ、正臣がなんと言おうと、私はあなたを認めないし、正臣への想いを諦めません」

 強く言い切る紫月さんを守るように、榊さんが立って、私に鋭い視線を当てていた。

 ふいに、肩に暖かさを感じた。
 九条くんが、私の肩に手をおいていてくれた。
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