虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
大丈夫だよ、九条くん。
これは、私が答えなければならないことだから。
紫月さんは、日本を代表する財閥の御令嬢で、本当ならとても私なんかが口をきける相手じゃない。
でも今の紫月さんは、一人の女性として、真剣に私に問いかけている。私が真剣に、九条くんを愛しているのか、と。
だから──。
「紫月さん」
私は呼吸を整えながら、言った。
「私に、あなたを納得させられる言葉があるかどうか分かりません。見当違いのことを言ってしまうかもしれません。でも、私の思ったままのことを言わせてください」
「……」
「紫月さんのおっしゃる通り、私は逃げ出そうとしました。でもそれは、私のつまらない見栄を守るためではありません」
頑張れ、私。
紫月さんのためにも、九条くんのためにも。
「九条くんに、幸せになって欲しかったんです。私よりあなたと結ばれた方が、九条くんは幸せになれると感じてしまったから」
「でも正臣は半狂乱になって、あなたを探したのよ。私まで巻き込んで」
紫月さんは口調も表情も、厳しかった。
「あなたの弱気が正臣を傷付けた。とても許せないし、認められません」
「おっしゃる通りです、浅はかでした。でも……」
この想いが、きちんと紫月さんに伝わるだろうか。
私は彼女の瞳を見つめて、言った。
「愛って、戦ったり競ったりしなければ、得られないのでしょうか。人を愛するって、そんな事なのですか」