虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
懸命に自分を励ましながら、私は言葉を続けた。
紫月さんはとても聡明な人だ、誤魔化しは効かない。
もし私が紫月さんに伝えられる言葉があるとするなら、それは、九条くんへの想いしかないはず。
紫月さんも私も、同じ人を愛したのだから──。
「紫月さん。私はまだほんの幼い頃に、九条くんに出会いました」
「それがどうしたと言うの? 私より数年早かっただけじゃない」
「初めて出会った頃から、九条くんはお星さまみたいにキラキラしていて、私は九条くんのそばにいるだけで、嬉しくて、楽しくて、ワクワクしていました」
「そうでしょうね。でも私だって、ミドルスクールの頃からずっと正臣を見てきたわ。誰よりもクールで、研ぎ澄まされたナイフのように鋭い正臣を」
「私は、キラキラしている九条くんを見ているだけで、幸せなんです。九条くんがより輝けるのならば、その横に居るのが私でなくても構わない」
「……何が言いたいのかしら?」
紫月さんの声が、少し低くなった。
「私は九条くんの重荷になってしまうのが怖くて、逃げ出そうとしました。紫月さん相手に勝ち目がないからとか、そんな理由ではありません」
「正臣の愛を得ようと努力するのは、愚かしいこと? 彼と共に生きたいと願うのは、不遜なことなのかしら」
私も足に力を込めて、紫月さんを見た。
「九条くんは賞品ではありません。勝っただの負けただの、九条くんに想いを寄せる人同士で争って、その姿が九条くんにどのように映っていたか、お考えになられたことはありますか?」
「戦わなければ、争わなければ得られないものもあります」
紫月さんは、唇を噛んだ。
「現に今、正臣の愛を、あなたが独り占めしようとしているではありませんか、早川さん」