虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「私が九条くんを独り占めするなんて、おこがましいことです、紫月さん」
私はありったけの勇気をふり絞って、正面から紫月さんを見た。
「でも九条くんが私を愛してくれるのなら、もう逃げません。誰かと争うためでは無くて、私を愛してくれる、九条くんの想いに応えるために」
「この……ぬけぬけと……!」
紫月さんが右手を振り上げようとしたその時、
「紫月」
九条くんが、口を開いた。
「お前はいい奴だよ、紫月。意地っ張りだけど、根は優しくて、正義感が強くて、嘘をなにより嫌う。俺だって、お前に惹かれなかったわけじゃないんだ」
「正臣……」
「ミドルスクールの頃、優しくしてやれなくて悪かった。あの頃の俺は、上にあがることばかり考えていて、お前を気遣ってやるだけの余裕が無かったんだ」
「……」
「婚約者って響きに、照れもあったんだと思う。俺も、お前に甘えていたんだ。甘えたまま、15年も待たせてしまった」
怒りで青ざめていた紫月さんの顔が、ほんのり桜色に染まったように見えた。
「でも……分かってくれ。パイロットは、俺の夢なんだ。父さんと母さんと俺の、大切な夢だったんだ」
九条くんは、紫月さんを見つめた。
「俺は、こんな馬鹿げた財力なんか要らない。地位も名誉も欲しくない。ただ、一人のパイロットとして空を飛んでいたい。それだけなんだ」
「……」
「紫月。お前は俺から見ても完璧な奴だけど、お前の見る未来に、御倉に入った俺の姿しか映っていないのなら、俺はお前と同じ夢を見ることはできないんだ」