虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
背が高くてスラリと手脚が長い九条くんは、足早に歩くニューヨーカーたちの人波に紛れても少しも見劣りしない。
私は小柄な方だけど、そんな九条くんが守るように寄り添って歩いてくれるから、安心してミッドタウンの街歩きを楽しむことができた。
5番街を北に進んで、49番通り交差点に来ると、右手にゴシック調の大きな教会、左手にはひときわ高くそびえ立つ摩天楼が見えて来る。
「これがセント・パトリック大聖堂、こっちがロックフェラー・センターだよ」
九条くんが指を差して教えてくれる。
このあたりに来ると、高級ブランドショップが軒を連ねていて、私たちは目についた店の扉を押して、ウィンドウ・ショッピングを愉しんだ。
「まあくんも、アクセサリー好きなの?」
「あまりよく分からないから、理恵が教えてくれると嬉しいな」
九条くんはファッションや小物のセンスも素敵だけど、ブランドにこだわりは無いみたいで、
「ヨーロッパ行きのフライトのときに、イタリアやスペインの雑貨屋を冷やかしたり、中東周りのフライトのときに、バザールを見て回ったりするくらいかな」
それは……センスも良くなるよ、九条くん。
でも九条くんと親しくなって、わかったことがある。
九条くんは見え透いたお世辞や過ぎた遠慮が嫌いで、素直な言葉を喜んでくれる。
だから、私がこの店内で楽しそうにしていれば、彼もきっと楽しんでくれる。
素直が一番だよね、まあくん。
私はキラキラ輝くアクセサリーたちに囲まれて、うきうきした足取りで白い店内を巡った。