虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
九条くんとの、甘くて穏やかな日々。
こんな日がいつまでも続けばいいと、願っていたのだけど──。
きっかけは、やはり突然の来訪者だった。
チャイムの音にモニターを見ると、エントランスホールに立つ一人の男性の姿が映し出されていた。
グレイのスーツの上にモスグリーンのハーフコートを羽織って、片手をコートのポケットに突っ込んだまま立っていた。
少し嫌な感じがしたのは、どこか斜に構えた雰囲気と、肩まで伸ばした長髪のせいだったかもしれない。
日本の男性だった。
「九条はいるかい?」
私が問いかけるよりも早く、来訪者が口を開いた。
私が戸惑っていると、様子を見に来た九条くんが、代わりにモニター越しに、
「直接ここに来るなと言っておいたはずだ」
露骨に不機嫌そうな九条くんに、モニターの男性は悪びれもせず、
「大事なことは直接伝える主義なんでね、上がらせてもらうぜ」
エレベーターでフロアに上がって来た男性は、私を見ると少し意外そうな顔をして、
「あんた、名前は?」
「早川理恵です」
男性は「ふうん」と呟くと、九条くんに向き直った。
「九条、これが新しい彼女か?」
「嫌らしい言い方をするな。それより、大事な事って?」
男性は急に声の調子を変えて、言った。
「探しものが見つかったぜ」
九条くんの顔色が、瞬時に変わった。
「理恵。俺は彼と大切な話があるから、しばらくリビングで待っていて」
そして来訪した男性と二人で、九条くんの書斎に入った。
なんだろう、胸騒ぎがする。
あんなに緊張した九条くんの顔、初めてだった。