虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
私はもう、立っていることすらできなかった。
膝をついて、涙を流しながら耳を塞ごうとする私に、黒木さんの言葉が容赦なく降り注いだ。
「お分かりかしらお姫さま。あなたが夢見た愛なんて、どこにもないの。あなたは醜く穢された、哀れなお人形なのよ」
「……」
「ああ、でもね、会社を辞めるなんて言わないでね。あなたみたいに都合のいいお人形、田村さんも手放したくないでしょうから。あなたは彼にとって、手慰みのおもちゃ。呼べば嬉々としてお尻を突きだす、はしたないメス犬なんだから」
「……」
「全く、メス犬ならメス犬らしく、尻尾と腰だけ振ってりゃいいものを、賢しらに振る舞おうとするから現実を突き付けられるのよ。おわかり? 早川さん」
「……」
黒木さんは、言葉の暴力で私をぐしゃぐしゃに押し潰してから、猫を撫でるような声音で言い残した。
「じゃあ、これからよろしくね、早川さん。仲良くやりましょうね」
甲高い笑い声を響かせながら、黒木さんは非常階段を降りて行った。