虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
その日の午後の羽田行きの便にまだ空席があったので、九条くんが二人分のチケットを手配してくれた。
慌ただしく準備を整え、私がリビングルームのソファーに腰掛けて、同行してくれる九条くんの知り合いを待っていると、
「理恵」
九条くんが入って来て、私をハグした。
「渡したいものがあるんだ」
目を閉じて、と彼が言うので、ソファーに座ったまま目を閉じると。首にさらりと何かが掛けられた。
「え……?」
「目を開けて、鏡を見てごらん」
慌ててバッグからコンパクトミラーを取り出すと、胸元に鮮やかな碧色のペンダントが、静かに輝いていた。
「まあくん、これ……」
「このあいだの店で買ってきた。理恵、青い石が好きみたいだったから」
澄んだ海の色のようなブルーダイヤ。
九条くんのことだから、希少な天然石を選んでくれたんだろう。
「それに、ね」
九条くんは優しい声で、
「青いダイヤには、絆とか、永遠の愛って意味があるんだって。だから……理恵に渡したかったんだ」
そうだよ、九条くん。
だからブルーダイヤって、花嫁を幸せにする石だって、エンゲージリングにも──。
私ははっとして、九条くんを見返した。
九条くんは優しい瞳で、私を見つめている。
九条くんは小さくうなずくと、また私をハグしてくれた。
「一緒に行けなくてごめん。無事に帰って来て、理恵」
涙が出そうだった。
大丈夫だよ、九条くん。
こんなにもあなたに愛されているから、私は負けない。
必ず帰ってくるから、待っていてね。
私の素敵な、まあくん──。