虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
高見澤さんは空港に向かうハイウェイで、大きなオフロードタイプのハンドルを握ったまま、私に言った。
「それと……だな」
一旦言葉を区切って、付け足した。
「奴との対決のとき、相手のペースに巻き込まれないことだ。あんたがぐらつけば、そこを相手につけ込まれる」
高見澤さんは、私が田村部長にほとんどマインドコントロールされていた事実を知って、特にそれを危惧していた。
部長との対決中に私のトラウマがフラッシュバックすると、最悪再び心をコントロールされかねない。
そうなったら──。
「勝ち負け以前に、命の保証もできないぞ。相手はそのくらいのワルだと考えていた方がいい」
私は田村部長の凍てついた視線と、心を砕く暴言を楽しげに吐き出す黒木さんの姿を思って、背筋に冷たいものが走った。
「何か手立てはあるんですか?」
「ここに来るまでに、やれるだけの事はやっておいた。後は──」
高見澤さんは前を向いたまま、人の悪そうな笑みを浮かべた。
「とある御仁にカマをかけておいた。そいつの出方次第だな」
「……私の知っている人ですか?」
「悪いが、今は内緒にさせてくれ」
「あなたを信用します、高見澤さん」
さすが九条くんのクラスメート。
私は高見澤さんにおかしな第一印象を抱いてしまったことが、恥ずかしくなった。
そのことを口にすると、高見澤さんは愉快そうに笑って、
「間違っちゃいないよ、早川さん。自分で言うのもなんだが、俺くらい油断のならない男もいないからな。まあ多少警戒されているくらいの方が、俺もやりやすいし」
悪い人ではないのは分かるけど、ちょっと掴み所がない探偵さんだった。