Gentle rain
私は調子に乗って、兄さんに話しかける。

「ねえ、兄さん。小林さんが言ってたけれど、雨の日の運転はとても気を使うんでしょう?」

「うん。確かに晴れの日よりも、運転しづらいかもな。」

「いいなぁ。私も車、運転したいな。」


私は小林さんの真似をして、ハンドルを握る仕草をした。

「美雨は、運転する必要なんてないよ。」

「だって、いつまでも兄さんに甘えていられないもの。」

「いいんだよ。」


兄さんの柔らかい口調に、スプーンを持つ手が止まる。

「俺は美雨のたった一人の兄さんなんだから、甘えていいんだよ。」

「兄さん……」


心の中がほぐれていく。


「なっ!」

屈託のない、甘い笑顔を兄さんに見せられると、血の繋がった私でさえ、目を奪われる。

「ん?」

「……ううん。何でもない。」
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