Gentle rain
そうお礼を言って、嬉しそうな表情を見せると、菜摘さんはまるで子供を見守るような瞳で俺を見た。

この手の女性は、母性本能が強く、男を育てる能力に長けているのだろう。


これは森川社長に聞いた話なのだが、菜摘さんが付き合っていた男は、交際当初仕事もパッとしないような普通のサラリーマンだったらしい。

それが菜摘さんの励ましが功を奏したのか、支店長の役職まで昇りつめたのだとか。

もちろん、相手の男性の努力もあるだろう。

それと同じくらい、菜摘さんの内助の功もあったのかと、今は思える。

間違いなくいい女。


その確信を得た俺の前に、菜摘さんは一枚の書類を差し出した。

「こちらは今回のプロジェクトの契約書になります。こちらにサインを頂いてもよろしいでしょうか。」

俺の気持ちは99%決まっていた。
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