Gentle rain
今まで対応してきた人間とはまた違う雰囲気の俺に、夏目はまだ警戒心を解かなかった。

それでも熱心に彼に話しかけ続けたのは、俺が“両親を慕って”来た人間ではない事を、知って欲しかったからだ。


「あなたは、父をご存じなのですか?」

弱々しく尋ねたきた夏目の態度に、正直もう少しで親しくなれると確信した。

「ああ。若い頃に、随分よくしてもらってね。」

だが、すぐに失敗したと思った。

夏目は“やっぱり”という顔をして、下を向いてしまったからだ。


「あっ、誤解してほしくないな。君のお父上との思い出を語ろうと言ってるわけじゃないんだ。」

俺のその言葉に、再び顔を上げた夏目は、ポカンと呆気に取られた表情をしていた。


「あくまで、同じ社長というポストに就いている者同士、これからの経営方針とか、話せたらと思っているんだが。」
< 20 / 289 >

この作品をシェア

pagetop