Gentle rain
「相変わらず忙しいようだな、夏目。」

「階堂程じゃあないよ。」

そう言ってシャンパンを飲む仕草一つとっても、自信に溢れているのは、少なくても仕事がうまくいっている証拠なのだと、会う度に思う。

「夏目君。」

「はい。」

そんな夏目は、年配の方の格好の餌食だ。

「また後で。」

彼は軽く手を挙げると、呼ばれた方へと向かって行く。


ここ数カ月、夏目ともまともに話をしていない。

聞きたい事は、たくさんあるのに。


会社を継いでしばらく経った後、半数近くの従業員が辞めてしまったと言っていたが、残りの社員はまだ残って、夏目を支えてくれているのか。

ワインの買い付けに、一度自分も同行したいと言っていたが、それができたのか。

美味しいワインを見つけたら、一緒に飲もうと言っていたけれど、あれから見つかったのか。
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