Gentle rain
「だがね。付き合っていた男がろくな男ではなくてね。」

「お父さん!!」

さすがの菜摘さんも、今までは黙って父親の言う事を聞いていたようだが、このセリフは気に障ったらしい。

「すみません。父がつまらない事を言って。」

“いいえ”と首を横に振ったが、正直あまり興味はなかった。


もし仮の話として、10年前に彼女に出会っていたのであれば、もちろん一度デートにでも誘っただろう。

だが俺も35歳だ。

女を見た目で判断するのは、もう飽きた。

美しいだとか、スタイルがいいだとか、名家のお嬢様だとか、そんなことどうでもいいんだ。

要するに面倒な事は言わずに、男についてくるか。

それだけでいい。

後は、相手が好き勝手に、日常を過ごしてくれればいいんだ。


「どうだ?階堂君。」

森川社長は、何かひらめいたように、ワクワクし始めた。
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