Gentle rain
自然に振り返った様は、その日本庭園にふさわしい存在感を放っていて、さすが社長令嬢だと、改めて実感させられた。

「いえ。元々、そろそろ結婚を考えていたんです。菜摘さんのような素敵なお嬢さんを紹介されて、返ってよかったですよ。」

「まあ。そんな。」

菜摘さんは少し、か弱い性格なのかもしれないと思ったのは、彼女の覇気のない声のせいだ。

「森川社長は以前から、あなたの事を自慢していましたよ。今日お会いして、その気持ちがよく分かった。」

俺がそう言って営業スマイルを見せると、菜摘さんはにっこりと笑った。

「有難うございます。」

父親を誉められて嬉しいのは、娘の性なのかもしれない。

いや、女性みんなが自分の父親を誉められて、嬉しいわけではないだろうが、少なくても菜摘さんは、嬉しいと思える人なのだろう。
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