Gentle rain
愛してるなんて、二人の気持ちが燃え上っている時に一緒に見る夢のようなもので。

その夢が冷めてしまったら、自分でも相手の何にこだわっていたのかすら、思い出せなくなる。

仕舞には、お互い男としての、女としての役割を果たしていれば、それでよくなる。

その点、菜摘さんは恋愛に呆れかえっていて、それだけでは結婚が上手くいかない事を、身を以て理解している。


「菜摘さん。」

俺は、菜摘さんの手を取った。

「ここは、お父さんが言う通り、僕と結婚しませんか。」

「階堂さん……」

「僕は、あなたに人並みの幸せを、与えられると思う。」

そこで、俺は菜摘さんを抱き寄せた。

そこに、愛はない。


愛があるとすれば……

そこでふと、夏目の妹を思い出した。

どうしてだ。

まだ一目しか見ていない、あのあどけない女の子の事を。
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