Gentle rain
「お客様、お待たせ致しました。」

私が袋を差し出すと、先ほどのお客様はパアッと笑顔になった。


「焦らない、焦らない。」

工藤さんはそう言って、お店の袋にラッピングした商品を入れた。

「小さなことから、コツコツとね。」

工藤さんの口癖だ。

でもこの言葉、私は好き。

「お客様に渡してきます。」

「そう。お願ね、夏目さん。」

「はい。」

私は返事をすると、お店の袋を持って、先ほどのお客様の元へ向かった。

“この仕事をやっていてよかった”そう思える瞬間だ。

「ありがとうございました。」

頭を下げて、お客様を見送る。

気に入ったら、また来てほしいな。

そんな思いでいっぱいだった。


満足感たっぷりで、身体をお店に向けると、工藤さんが店の奥から大声で叫ぶ。

「夏目さん、在庫チェックお願いできる?」
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