Gentle rain
「はあ~い!!」

私も大声で叫ぶと、大きく手を振った。


意外と、在庫チェックは好き。

お店の中にある雑貨を、全て見て回れるから。

毎日同じ物を見ていても、飽きない。

私の至福の時間。

な~んて、本当は足りなくなったものは、発注しなきゃいけないから、油断はできないんだけどね。

少し楽しみながら、そして真面目に仕事をしながら、私は一つ一つ、数を確かめていた。


その時だ。

「すみません。」

男性の声がして、私は真後ろを振り返った。

「あれ?」


そこには、懐かしい姿。

忘れもしない。

あの、雨の日に、兄さんが連れて来てくれた人……


「階堂さん。」

「覚えてくれていたんだ。君は夏目の妹の……」

「はい。美雨です。」

優しく笑ってくれた階堂さんは、あの人同じで、眼鏡の奥の瞳に、吸い込まれそうだった。
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