Gentle rain
「いいんだ。俺みたいないい歳した大人が、雑貨屋にいるなんて可笑しいよな。」

そう言った途端に階堂さんは、周りをキョロキョロと見渡し始めた。

「いいえ……お洒落なプレゼントをお選びになられる方だと思います。」

「え?」

偶然だけど、階堂さんと目が合った。

そしてそのまま……

私と階堂さんは、時間が止まったように、二人で見つめ合ってしまった。


「ごめんなさいね。」

ハッとして後ろを見ると、他のお客様が私の横を通り過ぎた。

「申し訳ございません。」

頭を下げて、また階堂さんを見ると、もう違う方向を向いていた。


もしかして、私と目が合った事、本当は嫌だったのかしら。

少し胸がズキっとしたけれど、階堂さんは今はお客様。

余計な感情を持つ事は、いけない事だ。


「階堂さん。」

振り返った階堂さんは、少し赤い顔をしていた。
< 47 / 289 >

この作品をシェア

pagetop