Gentle rain
「これもお願いできる?」

それは先ほど、階堂さんに勧めた、イランイランの香りのするキャンドルだった。

「はい。プレゼント用でございますか?」

「ああ。別々に包んでね。」

「かしこまりました。」

その時の私は、何も考えていなくて、言われるがままに別々の包装を、工藤さんに頼んだ。


その真意に気づいたのは、お会計が終わって、お店の入口まで階堂さんを見送った後だった。

「それでは、気を付けてお帰り下さい。」

別々のキャンドルが入っている袋を二つ、階堂さんに手渡した。

「ありがとう。」

袋を渡す際に、階堂さんの手が私の指に触れた。

さり気無い仕草だったけれど、階堂さんに触れられた部分が、熱く感じる。

「またお待ちしています。」

頭を下げて、お店のドアを開けた。


「そうだ、美雨ちゃん。」

「はい?」
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