Gentle rain
「これ、今日のお礼。」

そう言われて差し出されたのは、さっき渡したプレゼントの袋だった。

「こっちがグレープフルーツだったね。」

階堂さんは袋の中身を見て、シールが貼っていない方を選んだ。

「そんな!受取れません!」

「どうして?」

「私は店員として、当たり前の事をしただけですから。」

必死に手を左右に振った。

「言ったろ?若い女の子に、プレゼントするんだって。」

『えっ!?』と、小さな声で驚いた。


まさか、まさか……

その若い女の子って、私の事……?


「受け取ってくれるよね。」

心臓のドクンドクンという音が、やけに全身に響く。

そして、震える手で私は、階堂さんからのプレゼントを受け取った。

「よかった。」

階堂さんのクシャっとした笑顔が、私の顔まで微笑ませる。
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