Gentle rain
「じゃあ。仕事頑張って。」

「……はい。」


そのまま階堂さんを、見えなくなるまで送ると、それまでの時間がなんだか、夢の中の世界に思えてきた。

階堂さんに貰った幸せな時間が、私の身体隅々まで、幸せで満たしてくれた。

そして、私は階堂さんからのプレゼントを持って、店の中へ戻った。


「あっ、やっと戻ってきた。遅かったわね。」

在庫チェックの途中だったせいか、工藤さんはその続きをやってくれていた。

「……すみません。」

なんとなくいけない気がして、咄嗟に身体の後ろに隠したプレゼントの袋を、工藤さんは見逃さなかった。


「隠す事なんてないわ。さっきのお客様に頂いたんでしょ?」

工藤さんは驚きもせずに、その事実を言い当てた。

「はい。」

そこまで知っているのなら、言い逃れなんてできない。
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