赤い糸
文化祭が終わると、もう完全に受験モード。
私立は、もう時間が無い。
休み時間でさえ、自分で持ってきたであろう、参考書を開いている。
私は、高校へは行くつもりは無かったが、親に反対されていた。
うちの両親は中卒だ。
就職するのに苦労したと言っていた。
だから、どんなに程度の低いところでもいいから、高校だけは卒業して欲しいと、母親に泣かれた。
まぁ、受かる受からないは別として、受けるだけ受けてみるか。
これで、落ちれば親も納得するだろう。
なので、私は公立1本組という、珍しい受験生だった。
本当に珍しいのに、これまた偶然なのか、しんちゃんも、公立1本組だった。
クラスでは私たち2人だけだ。
そんな中、私としんちゃんが、職員室に呼び出された。
職員室に向かいながら、「なんかした?」「ひろちゃん悪い事してないで。しんちゃん何かしたやろ?」
「してへんわ。分からん。何やろな?」
怒られるのを覚悟して、職員室に入った。
すると、美術の先生がきて、私としんちゃんの絵が、作品展に選ばれたと言うのだ。
しんちゃんのストップエイズは、分かるが何故私が選ばれたのかはよく分からない。
ただのペンギンの後ろ姿。
もの寂しげな夕日。ただそれだけ。
でも、しんちゃんと2人だけって言うのが嬉しかった。