再会した幼馴染に溺愛されています。
「ちょっと屋上まで来てくれない?」
「え、どうして……」
斉藤さんは私の返事を聞くこともせずにグイッとブレザーの袖を引っ張る。
周りの数人の女子は一言も発さないし、とても怖い。
ドキドキする。
冬馬との高鳴りとはまた違う、ひたすら不安と恐怖の感覚だ。
「わ、わかったよ……行くから」
私は自分の思いとは逆に屋上への階段を登り始める。
一歩ずつ近づくごとに足を出したくなくなる、完全に怯えているよ……。
逃げ出したい気持ちに駆られるけど現実は非情で考え込んでる内に屋上に到着してしまった。
「ほら、いくよ」
扉の前で立ち止まる私に斉藤さんが声を掛ける。
今から何をされるのだろう。
その不安しか今の私にはなかった。
パッと思いつくのは「いじめ」だ……。
ドラマの世界でしか見たことがない展開に戸惑うし、この人たちならやりかねない……。
ガチャっという音と共に風を頬に受け、眩しい太陽が私に襲いかかる。