同居人は無口でクールな彼



わたしの悪口を言っているのを何回も耳にした。

それにわたしがいなくなると、急に話し出すのだ。


教室を出れば、教室の中でひそひそ。

トイレに入ろうとしたときも、聞いたことがあった。


だから、あの人たちが言うように、友達になりたいなんて一度も思ったことがない。

わたしの悪口を言っていた人たちとは――


「どうしたの?のんちゃん」


ペンキを買って学校に帰っている途中、のんちゃんがなにやら考え込んでいた。

声をかけると、はっとしたように、わたしに笑顔を向ける。


「ううん……私も勇気を出さないとなって思って」

「…………?」


一体どういう意味なのかは、聞けなかった。

あまりにも、のんちゃんが決心した表情をしていたから。


クラスに戻ると、これでようやく文化祭の準備が再開できた。

というのも、ペンキが来るまで、だらだらと廊下の隅で遊んでいた人たちもいたようだったから。




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