同居人は無口でクールな彼
わたしはやるなんて言っていないのに。
どんどん話が進んでしまっている。
それに、わたしは当日お化け役じゃないのに。
しかも頭からペンキを被るなんて、嫌に決まっている。
「わたし……できない」
「はあ?聞こえないんですけど」
「ねえ、ちょっとやってみてよ、野々村さん。私手伝ってあげるから」
クラスメイトの女子たちがここぞとばかりに、集まってくる。
それを見て男子たちは「さすがにまずいだろ」という表情を浮かべている。
でも、ただ見ているだけだった。
「おい」
「ちょっと!それはやりすぎ!」
翔哉くんの声をかき消すくらいに、声を上げてくれたのはのんちゃんだった。
今までクラスではわたしと関わらないことを徹底してくれていたのんちゃん。
そんなのんちゃんが、わたしの前に立って意見してくれたのははじめてだった。