同居人は無口でクールな彼



のんちゃんに、ぎゅーっと抱き締められたのは、この時がはじめて。

嬉しくて、わたしも同じくらい抱き締め返した。


「あー、ずるい。俺も……」


本気なのか冗談なのかわからないテンションで、灰谷くんが両手を広げる。


すると――


「やめろ!」

という、翔哉くんとのんちゃんの声がそろった。


「あら、篠原。たまには気が合うじゃない」

「…………べつに」


しゅんとする灰谷くんが不憫で、わたしは話題を変えようと、思考を巡らせた。

わたしから会話をふるなんて、今まで想像できなかったのに。

自然と言葉が出ていた。


「ねえ、明日の文化祭、4人でまわらない?」


きっと、この4人ならすごく楽しくなると思った。




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