私の希望と、僕の光

実は、ずっと見ていた。いつも寒そうにしている彼女が、少しだけ目に入って。元々は川の流れを見て自分を落ち着かせようとしていただけなのに。それなのに、いつも頑張っている彼女を見て、いつしか自分も、なんて思いを抱いていた。
まあ、結果的に無理だからこうなっているんだけど。

「おはようございます!」

元気に話すその姿が、自分の心に棲みついていた。そんなことを毎日続けていたら、彼女はいつの間にか高校生になっていた。綺麗に、なっていた。

「そんな見んといて」

そんなことを口に出していた。彼女も彼女で驚いた顔をしていて。ああ、この子の反応好きやなあ、なんて。自分なのに自分じゃないことを言っていた。

「いつもここにいますよね、何でですか?」

言えるはずないよな。君に会うためだ、なんて。高校生に会うために、朝からずっとここにいましたなんて、犯罪になりかねない。(と思っている。)
だから咄嗟に出た言葉で誤魔化してしまった。

「初対面の人に質問責めするん?」

そんなことを言いたいわけではないのに。そんな言葉でも微笑んでくれる彼女は、僕の中で光として輝いていた。
彼女の優しい顔と、自分を思いやる姿、何もかもが素晴らしく見えてくる。それなのに、自分に素っ気ないから、こんなことになっているのに。僕はそんなことにも気がつかない。

『いつも優しいですね』

『私、そう言うところ好きですよ』

『ツンデレにもほどがありますよ』

全ての声と、表情が自分の心に響く。まるで空気みたいに染みていくんだ。また、今日も芝生に腰かけて、川の流れを見つめる。それがいつものルーティン。
我ながら甘いとは思うが、彼女が来るまでここから動かず、待ってしまう。

「あ、今日もいた!」

「うるさいて」

「今日はいつもより肌寒いですね!」

「…そうやなあ」

ごめん。体温が高いのか、肌寒いとか分からへんねん。温度がよくわからんな。それは、やっぱり自分がおかしい、って言うのは分かっている。でも、それは誰にも悟られたくない。ただ、それだけ。

「今日学校で…」

いつものが始まる。これを聞かないと一日が終わる気がせえへんな。いつもより雲の流れが速くて、自分たちがスローモーションに見えてくる。

「…あかんなあ」

「何がですか?」

心の声が漏れていたのか、彼女が返事をした。でも返す言葉はたった一つ。

「何でもない」

また、自分に嘘を重ねる。これで何度目になるんだろうか。
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