私の希望と、僕の光

所謂お金持ちの家に生まれた私。両親が欲しかったのは、跡取りとなる男の子。しかし生まれたのは女の子。跡取りが生まれなくては意味がない。私は生まれてすぐ養子に出され、今の家に来た。養子としてでも私を引き取ってくれたのには感謝している。しかし、今の家ほど居づらいものはない。元々子供が二人いる家庭なのに、よく私を引き取ってくれたなあ、と。ちゃんと高校にも通わせてくれたのにも、感謝してもし足りない。でも。

「あかり」

「はい。あんまり今回は出勤できなくて、少ないかも…。テストとかもあったし」

「え？テストとか聞いてないけど」

生活費も食費も、私の分は自分で出す。おかげさまで毎日生き延びるのに必死で、バイトを増やすのも精一杯で、寝不足だ。学校が終わってから、芝生で夢のひと時を過ごして、夜勤のバイトへと足を運ぶ。高校生なんて身分は明かしていない。なぜなら、夜勤のバイトが出来なくなってしまう。夜勤じゃなければ、時給は低すぎて生きて行くためのお金が入らなくなってしまう。

「あかり、私も頑張って早くバイト見つけるからね」

そう言ってのは義理の姉である、美咲だ。でも、そんなセリフは何回聞いただろう。バイトするする詐欺で、一回たりとも実行に移したことはないじゃないか。そんなことを言っておいて、私にお金をたかって来るんだから、この親に子ありって感じ。そんなだから私の貯金はすぐに消えた。
こんなことになるなら、私は前の家にいた方が幸せだったのかも、なんて。
高校生になって、部活とかやって、青春を存分に満喫したかったのに、うちにはそんなものに費やすお金はない。こんな苦労、人生で二度としないと思う。全てを話し終えた後、私の頬を涙が伝っていた。

「泣きたいなら、泣いてええよ」

そう言ってくれた彼は、そっと私の背中を撫でてくれた。私の過去を知っている人なんて、ほとんどいない。と言うより、いないに等しい。私に本当の友達と呼べる人はいないからだ。
なんで、こんなことになっているんだろう。どうして。

「あのな、あかり」

彼の口から発せられた「あかり」と言う声。家で呼ばれる名前や、友達に呼んでもらえる名前よりも、すごく安心する声。それと同時に好きになった自分の名前。それにまた、涙を流すんだ。

「人生はそんなもの。嫌いになろうと、知らない人が親になろうと、そんなもんなんやって。でも、あかりの中でこれ以上のことはないと思うわ。早く幸せになろうや」

優しくこちらを見つめてくれる瞳は、私をさらに安心へと導いた。少しだけ、胸がトクン、となった気がする。

「私が幸せになるために、今、できることは何ですか」

泣きじゃくっている私のほっぺを、彼はそっとつつく。

「ただ、笑うことやろ」

彼はそう言って、芝生から立ち上がり、知らない方向へと歩き出した。
私はただその後姿を、見つめることしか出来なかった。