私の希望と、僕の光
彼女の目は、まるで軽蔑しているかのような目だった。ああ、言わなきゃよかったかななんて。一人で反省している感じ。でも、彼女を自分が守りたかっただけ。ただ、それだけなのに。

「私、霊感」

「ああ。なさそうやな」

「それなのに…」

「選ばれたんやな、きっと」

「誰に、」

「んー、誰やろうな」

彼女は怖がっている。それは見てすぐわかることで。
それなのに近づきたい、なんて。
ああ、ダメなやつやな、僕は。

「私は、」

「うん、何も言わんくてええわ」

「えっと、」

「あかり、もう帰らなあかん時間や」

「え?」

「もう、ここには戻ってくることはない」

そう、そうやって突き飛ばせばええんやって。もう、会うことはないんやから。

・・

突然告げられた幽霊宣言。私は別に霊感が強いわけでもなく、本当にただの一般人。彼が幽霊なんて、信じがたい事実。

「会えないんよ、あかり」

「私はまだ会いたいです」

「時間がない」

「じゃあ、今日の質問いいですか」

「…なんや」

「なんでずっとここにいたんですか」

私がずっと聞きたかったこと。これが聞けたら、私はこの人とさよならするんだ、今そう決めた。…もしかしたら未練たらたらかもしれないけど。

「…お前が一人やったから」

ああ、ダメだ。この人のことが好きで好きで仕方がない。
私は溢れそうになる涙を必死で止めた。

「お前を支える人になりたかった。でも、もう遅かったらしい」

「なに、が」

「もう、好きになってもうたから」

彼はそう言って、最後に私の目の前まで歩いてきた。そして私の目を見つめる。綺麗な指先がさっと伸びてきて、私の頬に触れる。

「なんで私は触れないのに、はるひさんは触れるんですか…」

「魔法使いやからやろ」

「くだらないこと言って」

「くだらなくないわ」

彼だけは、私にそっと触れる。幽霊だとしても、ちゃんと彼の、はるひさんの温度が伝わってくる。

「ずっと見とったよ」

「いつから、ですか」

「ここ付近に来た時から」

「そんな前から…」

ここ付近に来たのは、私が小学生の時。そんな時から、ずっとここで見ていてくれた。それを知ると、さらに感情が溢れて、感情迷子というものに陥る。

「お前は、僕の希望だ」

「…それなら」

「ん?」

「それなら、はるひさんは私の希望であり光でした」

目の前の彼は、私の言葉を聞くと、そっと唇に温もりを感じた。
私から触れることは出来ないのに、彼の温もりが伝わってくるのは、また不思議な話。
最後は、彼が「好きやった」と言う言葉と共に、頭を撫でた。笑顔で。

あれから、二年ほど月日が経った。もうあっという間に高校を卒業する季節で。実を言えば、今でもあの景色が脳裏に浮かぶ。彼は元気なんだろうか。
私はずっと元気です。ずっとあなたがくれた言葉が、頭から離れません。消えた瞬間も、昨日のことのように思い出します。あなたがいなくなって、全て終わったと思った時、あなたの温もりをかすかに感じます。
私はあなただけが頼りだったのです。

「大好きだったなあ」

彼らしい人影が後ろにゆらっと見えたのは、私だけの秘密。
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