私の運命は、黙って愛を語る困った人で目が離せない。~もふもふな雪豹騎士にまっしぐらに溺愛されました〜
「どうせ、辺境伯夫人になるなら、これくらい出来るようになるべきだとか正論ぶちかまして、嫌われたんでしょ。ああいう子はただ甘やかされたいし、自分は、何の努力もしたくないんだよ。兄さんがこの先どれだけ苦労していても、自分のことしか言わないと思うよ。そもそも、周囲に羨ましがられたい以外何も考えていないアナベルが、方々に気を使って面倒くさいことばっかりしなきゃいけない貴族の奥方になるなんて、到底無理なんだけどねえ」

 一気に持っていた酒瓶を飲み干すと次の銘柄は何にするかと、元商人だったイグレシアス伯爵カールが気合を入れて用意してくれた酒の産地を確認した。流石にそれを飯の種にしていた目利きの彼はお目が高い。これは美味しいとよく話題に上がる酒の瓶が、まるで高級酒の見本市のようにズラッと並べられている。

「……だが、将来苦労するのはアナベルだと思って……」

 ニクスは眉を顰めて言った。兄も傍目からはわからないがかなり酔ってはいるようだ。普段、こんなことを弟と言えど口にしたりしない。融通の利かない堅苦しい兄もたまには愚痴もこぼしたいのかと、ネージュは肩をすくめた。

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