私の運命は、黙って愛を語る困った人で目が離せない。~もふもふな雪豹騎士にまっしぐらに溺愛されました〜
「なるほどな。どんなに選択肢を用意されたとしても、必ず選んでしまうもの。それを選ぶのは、自分で決めているということか」

 ニクスはまた持っていた酒瓶をあおった。ちゃぽんと瓶の中の液体が鳴った。あれも高価な酒でとてもこうやって無造作に飲むような価格ではないのだが、酒豪が多い家系で誰に似たのか滅法酒に弱い弟の結婚のお祝いの日なのだ。たまには、こんな風に飲むのも良いだろう。

 いつも雪山に囲まれ空気のキンとした寒い地域に住んでいるせいか、湿気が多くむし暑いこの気候がなんとも不思議な感覚だった。兄と二人揃って甘やかした弟も爵位を持つのならそのための勉強をするのも大変だろうし、この場所に飽きるまでは当分は居てやるかとネージュはぼんやりと思った。

「父と弟に運命の番がわかるなら、僕にも可能性あるよね」

「お前、結婚する気あるのか」

「なにそれ、僕だって良いなって思う子くらい居るよ」

「……お前はわかりにくいからな。愛されたら大変だろうな。相手の子に同情するよ。いままで何にも執着しなかったお前の執着を一心に受けるなんて」
 
「兄さんひどいなあ。ちゃんと大事にするよ……僕なりにね?」

「ちゃんと好きになったら好きと言えよ。お前はお喋りなくせに本当に、大事な言葉が足りない。決定的なことを何も言わずに、いつの間にか子供出来てましたじゃすまないぞ」

「はは。それ、笑える」


Fin
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