私の運命は、黙って愛を語る困った人で目が離せない。~もふもふな雪豹騎士にまっしぐらに溺愛されました〜

Side Snow

 スノウは久しぶりに引っ張り出した正装の襟のあたりが、きつく感じて眉を顰めた。周りに居るのはデビュタントと呼ばれる白いドレスを着た女の子たちと、その手を取るパートナーの男たち。本当なら、今夜はユージンと飲みに行く約束をしていたのにと思うとますます表情を渋くしてしまう。

(どうこう言っても仕方ない……二曲だけ踊ったらアナベルに上手く言って、さっさと帰ろう)

 何故か何の関係もないはずのスノウが、兄の婚約者アナベルの社交界デビューのエスコートをすることになった。

 長兄ニクスは王の勅令の任務でどうしても外せない用事で現在この国にはいない。次兄のネージュのエスコートは絶対嫌だとアナベル本人が泣いたから、結局お鉢が回ってきたスノウが今ここに居る。

 憂鬱な気分を誤魔化すように頭を振ると、チラチラとこちらを見ている女の子と目が合って、曖昧に会釈してさりげなく目を逸らした。

 自分たち兄弟が年頃の女の子たちにどんな風に噂されているかは、流石にこの年齢になるともうわかっていた。スノウは気楽な三男の身分のせいか数え切れない程に縁談はあったが、どうしても、自分にとっての唯一の人じゃないと嫌だという気持ちを誤魔化せず、全部断っていた。

 両親もスノウを政略のための結婚をさせる程、何かに困っている訳でもない。王の信任が厚い父のシュレグは、この国の貴族社会で絶大な権力を持っているからだ。

「ねえ、スノウ。ちゃんとしてよ」

 手を持ったまま待機していたはずなのに、明後日の方向を向いてしまっているスノウを見てアナベルは口を尖らせた。

「まだ時間あるだろう?」

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