旦那様は征服者~慎神編~
「莉杏、ただいま!」
「お帰りなさい、慎神くん」

包み込むように抱き締める、慎神。
莉杏も慎神の胸に顔を埋めた。

「慎神くん、今日は慎神くんの好きな食べ物だよ!」
慎神を見上げて微笑んだ、莉杏。
「ほんと!?楽しみだなぁ~!」

「あー海老だぁ!」
「フフ…」
まるで子どものように微笑む、慎神。
莉杏も微笑んで見つめた。

そのままソファに座った、慎神。
「莉杏、来て?」
膝の上に促す。
莉杏が跨がって座ると、口唇をなぞってきた。

「今日、何処にいた?」

「え?どこって、いつものスーパーだよ!」
「それだけ?」
「え?」
「莉杏、ここでよく考えて答えて?」
莉杏の頭をポンポンと撫でる、慎神。

「デパートにも行ったよ。海老買いたくて……」
「そっか!」
「うん、慎神くん海老好きでしょ?
大海老があるってネットで見つけたから。
ついでにと思って!」
「そうだったんだ!ありがと!
じゃあ、着替えてくるね!お腹すいたぁ~」
「うん」

一瞬、オーナーへの手紙がバレたのかと思い身構えたが、どうも違うらしい。
思ったより簡単に、解放された。

「このネックレス綺麗だね…」
いつものように、慎神の上に被さるように寝ている莉杏。
慎神の心臓の音を聞きながら、ネックレスに触れていた。
「うん、世界に二つしかないネックレスだよ」
「へぇー、いいなぁ!
確か、親友からのプレゼントなんだよね?」
「うん、そうだよ」
「どんな人?」

「いつも笑ってて、怒ったとこ見たことがない。
でも……とっても恐ろしい男だよ」

「ん?いつも笑ってるのに、恐ろしいの?」
「そう。僕は怖くないけど(笑)」
「んーよくわからない…」

「莉杏、もうその話やめよ?
僕のことだけ考えて?」
「うん」
「キスして?莉杏」
「うん」
慎神の口唇にゆっくり押し当てるように重ねた。

徐々に深くなっていく。
「ンンン……はぁ…」
「莉杏…口唇、離さないで!
ほら、もう一回して?」
「でも苦し…」
「ダメ!!」
慎神は莉杏の後頭部を押さえてきた。

「んんっ…!!」
「ん…莉杏…好き…大好き……もっと、して?
もっと…僕しか……見えなくなって…」


スースーと寝息をたて、自分の身体の上に寝ている莉杏を見て愛おしそうに微笑む慎神。
ゆっくり、頭を撫でている。

少しずつ……慎神の雰囲気が黒くなっていく。

【奥様のお陰で、辞めずに済みました。
ありがとうございます!】
今日“あの”店員が会社に来て、言った言葉だ。


「ほら、莉杏。
無能は、悪影響しか与えないだろ?
同情なんて、最低な感情でしょ?
せっかく、俺の目を盗んで頑張ったのにね!」
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