聖なる夜に、始まる恋
親との話が付き、私はマーティに


『いろいろ考えたけど、やはり東京で勝負してみようと思います。新居を決める為、近日中に上京するつもりです。』


とSNSで報告。


更に阿久津教授には加えて、先生にご迷惑をお掛けしますが、お言葉に甘え、研究室でお世話になりたいと電話で直接お願いした。


『そうか、ならよかった。改めて歓迎するよ。菅野さんなら、後輩たちのいい目標にもなる。』


教授は喜んでくれたし、マーティからも


『ブラボー!いよいよチャレンジの始まりだね、僕もワクワクして来てるよ。ところで、僕の来日予定なんだけど、仕事の都合で、クリスマス休暇の頃にずれ込みそうなんだ。ゴメンな。その時には、君の故郷を是非訪れたいと思ってるんで、よろしく。じゃ、再会を楽しみにしてるよ。』


と返事が返って来た。


(マーティ、こっちに来るんだ。)


一瞬、顔がほころんだけど


(さぁ、もう後戻りは出来ない。前を向いて進んで行くだけ・・・。)


私は身の引き締まる思いだった。


上京に当たっては、寝泊まりする場所が必要になる。いい物件がすぐに見つかればいいが、数日の滞在は必要だろう。


帰国した時は、飛行機の到着時刻やその後のスケジュールの関係で、ちょっといいホテルに泊まってしまったが、今度はそうもいかない。


あれこれ検索して、手頃なビジネスホテルをとりあえず3泊予約して、いよいよ準備は万端・・・のはずが、女子のお泊りには必需品が足りないことに気付いて、買い出しに出た。


男子は化粧水なんて、みんな同じだと思ってるだろうけど、デリケートな肌の持ち主の女子には死活問題。カリフォルニアにいる頃は、合うものを探すのに結構苦労した。


行きつけの専門店に赴いて、無事に手に入れて、ホッと一息つき、さぁ帰ろうとレジで回れ右をした途端、私は固まった。そして、私に気づいた相手も固まっている。


しばし、見つめ合った私たちは、しかし他のお客さんの邪魔になっていることに気付いて、慌ててその場を離れる。


「久しぶり、だね・・・。」


「はい・・・。」


(まさか、こんな所で出くわすなんて・・・。)


気まずいとしか言いようのない空気の中、私は目の前の廣瀬・・・ううん二階彩さんとぎこちなく言葉を交わした。
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