聖なる夜に、始まる恋
私たちが訪れたのは、阿久津武彦教授の研究室だった。
ノックをして、中に入ると、教授はいつもの温厚な笑顔で私たちを迎えてくれた。
「菅野さん、無事に帰国出来て、まずは何よりだ。」
「はい、ありがとうございます。」
子供の頃から絵が大好きで、中学、高校では美術部に所属した私は、迷わず美大に進学して、4年では飽き足らず、親にワガママを聞いてもらって、大学院にまで進ませてもらった。
その6年間、私が師事したのが阿久津教授。私は随分可愛がっていただき、熱心に指導していただいた。
「私の目に狂いはなかっただろう、マーティくん。」
「はい。京香の絵を初めて見た時の衝撃は今も忘れませんよ。」
「相変わらず、マーティは大袈裟なんだから。」
「いや、本当さ。こんな絵を描ける人が、画家の道を諦めてしまっていたなんて、信じられなかったよ。」
照れる私の横で、興奮しているマーティ。
「私も菅野さんが卒業する時は、随分引き留めたんだが、意志が固くてねぇ。だから、彼女からもう1度、絵の勉強をしたいと連絡をもらった時は嬉しかったよ。」
そう言って、教授は頷く。
「先生、この2年の留学で、京香は一段と成長しました。もう充分に画家として、勝負出来るはずです。」
「うむ。そうなると、私のもとを離れたのは、君にとっては、正解だったのかもしれない。」
「とんでもありません。私は先生の教えに忠実に描いているだけです。」
慌てて首を振る私に
「お世辞とわかっていても嬉しいね。」
教授はそう言って満面の笑み。
「とにかく、今の京香に必要なのは、名前を売り込むことです。その為の努力は、もちろん僕も惜しみませんが、先生のお力も是非拝借したいと考えております。」
「及ばずながら、それは喜んで引受させてもらうよ。」
マーティの言葉に教授は頷く。
ノックをして、中に入ると、教授はいつもの温厚な笑顔で私たちを迎えてくれた。
「菅野さん、無事に帰国出来て、まずは何よりだ。」
「はい、ありがとうございます。」
子供の頃から絵が大好きで、中学、高校では美術部に所属した私は、迷わず美大に進学して、4年では飽き足らず、親にワガママを聞いてもらって、大学院にまで進ませてもらった。
その6年間、私が師事したのが阿久津教授。私は随分可愛がっていただき、熱心に指導していただいた。
「私の目に狂いはなかっただろう、マーティくん。」
「はい。京香の絵を初めて見た時の衝撃は今も忘れませんよ。」
「相変わらず、マーティは大袈裟なんだから。」
「いや、本当さ。こんな絵を描ける人が、画家の道を諦めてしまっていたなんて、信じられなかったよ。」
照れる私の横で、興奮しているマーティ。
「私も菅野さんが卒業する時は、随分引き留めたんだが、意志が固くてねぇ。だから、彼女からもう1度、絵の勉強をしたいと連絡をもらった時は嬉しかったよ。」
そう言って、教授は頷く。
「先生、この2年の留学で、京香は一段と成長しました。もう充分に画家として、勝負出来るはずです。」
「うむ。そうなると、私のもとを離れたのは、君にとっては、正解だったのかもしれない。」
「とんでもありません。私は先生の教えに忠実に描いているだけです。」
慌てて首を振る私に
「お世辞とわかっていても嬉しいね。」
教授はそう言って満面の笑み。
「とにかく、今の京香に必要なのは、名前を売り込むことです。その為の努力は、もちろん僕も惜しみませんが、先生のお力も是非拝借したいと考えております。」
「及ばずながら、それは喜んで引受させてもらうよ。」
マーティの言葉に教授は頷く。