君の初心者



「紗良、さっきの言葉、もっかい聞かせて欲しい……な」



智也くんはしばらく抱きしめ合っていた腕の力を緩めて、わたしを見下ろす。



「えっと、さっきの言葉?」



大切に想ってくれて……。のとこかな?



「あの、紗良が独り言で言ってた……好きってやつ」



智也くんは顔を赤くして、そう呟いた。

そんな顔を見るのは初めてで、ちょっとどきっとする。



「えっと……。好き、大好きだよ。智也くん」



わ、わたしこんなこと一人で言ってたの……っ!?
改めて考えるとすっごく恥ずかしい。

すると腰に手を回され、またぎゅっと抱きしめられた。



「うっ、かわいい……。俺も負けないくらい大好きだよ、紗良。ほんと好き、大好き。まじで好き、止めらんないくらい好き、大好き。俺のかわいい紗良。好きすぎてたまんない」


「えっ、そっ、そんなに好きって言われたら、わたし……っ!」



真っ赤に火照っているであろう顔を見られたくなくて、智也くんの胸に顔を埋めた。


やっぱり、智也くんに敵いそうにはないみたい。



始まったばかりの私の……。ううん、智也くんと私の恋。

これからいろんなことに戸惑ったり、不安になったりするかもしれないけど。


……でも、それ以上に“恋”することって幸せなことだと思うから。

まだまだ君の初心者な私だけど、たくさん智也くんのことを知って、たくさん好きになっていこう。


私は身体にぬくもりを感じながら、まだ見ぬ未来に想いを馳せた。




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