君の初心者
でも、それは違うんだ。
智也くんもわたしと同じことを考えていたんだ。
わたしだけじゃない、そう思ったら、少し心が軽くなった気がする。
「あのね、智也くん」
「……なあに、紗良?」
低くて優しくて、安心する声。
智也くんがゆっくりと顔をあげたのを感じた。
「あの……、ね」
「うん」
「智也くん、だけじゃないよ。わたしだって、嫌われたりしないかなって不安に思っちゃってたんだ。わたし、恋なんて初めてだから……」
思ってたことをちゃんと口にすると、伝えたいって想いで溢れてしまう。
「でもね、好きって気持ちはどんどん大きくなって。重たいと引かれちゃったりしないかなとかも考えちゃって……」
そこまで言って、わたしはふぅ、と息を小さく吐いた。
しばらく間が空いたあと、智也くんが言った。
「ごめんね、そんなふうに思わせて。……俺も不安だったのに、好きって気持ちは大きくなるばかりだった。どんどん膨らんでった」
ぎゅっとする力が強くなり、わたしもそれに反応するように抱きしめる力をより強くする。