秘密のノエルージュ
テレビの中ではお笑い特番が放送されているが、それよりも久々に入る大和の部屋の中が気になってしまう。
昔から壁の上部に飾ってあった、主に野球関連の賞状の位置は変わっていない。けれど前より本が増えている気がする。漫画も、小説も、参考書も。
その代わり、壁に貼り付けてあったアニメのポスターや、床に転がっていたゲーム機やソフトがなくなっている。大和は小さい頃より、整理整頓が上手になったらしい。
「菜帆」
急に話しかけられて、びくっと飛び上がってしまう。すでに食べ終わっていたケーキの皿とコップを乗せたテーブルをずずずっと遠くへ押し退けて、代わりに開いた視界に大和が割り込んでくる。
「今……着てんの?」
「う、うん……」
聞かなくてもわかる。
下着のことだ。
「ありがとう、大和。思った通りすごい可愛かった。身体にもちゃんと合ってるみたい……大事にするね」
「ん」
受け取ったときにちゃんとお礼を言っていなかったので、改めて感想とお礼を伝える。大和はすぐに安心したように笑ってくれた。
大和も不安だったのかもしれない。だって客観的に考えたら、どう考えてもドン引き変態案件だ。《《まだ付き合っていない》》女の子に、下着をプレゼントするなんて。
でも大和なりに、菜帆がいちばん喜ぶものを考えてくれていたのは事実だろう。菜帆はその心を嬉しいと感じてしまう。