秘密のノエルージュ
「菜帆」
「……ん」
名前を呼ばれて、身体を引っ張られる。下着姿のまま大和の腕に抱きしめられると、心音が急激に大きくなった。
そこでようやく気付く。恋がわくわくと楽しいだけじゃないこと。菜帆はまだ、大人の関係に踏み出す自覚が足りていなかったということ。
長年の幼なじみが相手ではドキドキしないかもしれないと思った自分は間違っていた。大間違いだ。目の前にいる大和と見つめ合うと、心臓はドキドキどころかバクバクして、楽しいよりも、むしろ恥ずかしい。すっごくとっても恥ずかしい。
「これを脱がせたくなるのが、男の性なんだよな」
「大和……!」
ただでさえ困っているのに、大和の指先はもっと恥ずかしいことをしようとしている。下着姿を見て終わりなわけがないだろ、と訴えてくる。全部を見る、と明確に宣言される。
大人の関係に踏み出す自覚が足りないなら、教えてやるから。
そう言われた気がしたが、返事をする前にもう一度唇を塞がれた。夢中で口付けに応えているうちに、大和の指が背中を辿って上昇してくる。
その指が下着の留め具の上でぴたりと止まった瞬間、やっぱり気のせいじゃないと気付く。菜帆が恥ずかしがる姿をあえてじっと観察する大和は、きっと、たぶん、少し変態なんだと思う。