秘密のノエルージュ
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中学・高校を卒業し、大学生になったばかりの頃。
菜帆は中学生になるときに買ってもらった下着をきっかけに、機能性と見た目の美しさを兼ね備えた女性用の下着――ランジェリーの世界に夢中になっていた。
ランジェリーは華やかでキラキラした、大人の女性の象徴だ。その美しいフォルムとディテールを求めて、モールやデパートでショッピングをするのがすごく楽しい。
お気に入りのブランドから新しい商品やシリーズの新作が発表されるたびに心が躍る。ブランドサイトを眺め出すと時間を忘れて没頭してしまう。
けれど女性用の下着は上下を合わせると意外と高価なもので、アルバイトをしてもたくさん買うことは出来ない。
確かに高校生の頃と比べると、大学生になってからはアルバイトの時間や時給は増えた。とはいえ女の子は下着だけではなく、メイク用品やファッションアイテム、友達との交際にもお金がかかるのだ。
だから限りある資金の中で自分好みのものを吟味して、悩みに悩んで購入した新しい下着は、菜帆にとっては宝物に等しかった。
その日も通販で購入した新しい下着が届いたことに夢中になっていた。なりすぎていた。帰り道で遭遇した大和に漫画の最新巻を借りる約束をした事さえ、ブランドの箱を見た瞬間にすっかりと忘れてしまっていた。