偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない

 その再就職先はイリヤホテル東京ルビーグレイス内にある女性専用スパ施設。夫である響一が総支配人を務めるホテル内にある、癒しの空間だ。

 今の職場である『mohara』は、マッサージや温熱療法を用いて凝りや痛みを緩和する『身体をほぐして癒す』ための場所だ。だが再就職先であるホテル内のスパはエステやトリートメントによってボディケアやヘアケアなどを行う『身体を磨く』ための場所であるといえる。

 全くことなる異業種とまでは言わないが、整体やリラクセーションサロンとホテル内のスパ施設では目的やアプローチが異なる。だからあかりにはこれから勉強しなければいけないことがたくさんあるだろう。

 その前準備として、採用試験に臨むまでにも仕事と家事の合間を縫って手技の勉強をしたり情報収集をしたりとやることが多かった。

 響一はそれを知っているので、無事に採用が決まったのかどうかをあらかじめ確認してくれていたのだろう。

「頑張ったな」
「えへへ」

 響一にぽんぽんと頭を撫でられるとつい照れてだらしのない笑顔になってしまう。優しい旦那様に甘やかされて褒められると、つい嬉しくなってしまうのだ。

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