偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない
「身体、熱いな」
「お酒を……飲んだので」
「そうか」
先ほど押し倒されたときに、響一の太腿に脚を乗せる格好に体勢を崩されていた。そのせいでスカートが捲れ上がり、中も見えそうになっている。脚がやけにスースーする。そんな格好が恥ずかしい。
その反面、彼の言うように身体は熱い。さらけ出した太腿に触れた響一が感嘆するほどに、全身が火照って汗ばんでいる。
そしてそれはあかりだけの話ではない。肌に触れる響一の指先も、十分に熱い。
「響一さんの身体も、熱いです」
「酒飲んだからだろ」
あかりが指摘を返すと、ぶっきらぼうな言葉が返ってくる。
響一がネクタイの結び目に指を入れ、左右にゆるく振る。その動きと同時に再び唇を奪われる。しゅる、とネクタイが引き抜かれる音を最後に、耳に届くのはお互いの唇から零れる甘ったるい水音だけになった。
舌と舌を絡め合うと、先ほど飲んだ白ワインの芳醇で濃厚な香りを喉の奥に感じる。空気とアルコールが鼻から抜けると同時に、あかりの冷静な判断力も足場を失っていく。
けれど不快感はない。むしろ響一の熱い舌と丁寧な指遣いは、あかりの心と身体をひたすら甘く丁寧にほどいていった。